宮代町郷土資料館杉戸宿 : 杉戸宿と百間領の村々平成24年度特別展宮代町郷土資料館2012 リンク
杉戸宿と十返舎一九

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十返舎一九の滑稽本として有名なものに「東海道中膝栗毛」が
ありますが、奥州道中を旅したものとして「奥羽一覧道中膝栗毛」があります。この本に杉戸宿が出てきます。内容は先生である延高と筑羅房、野次郎兵衛、喜多八の 4 人で杉戸宿の旅籠屋釘屋嘉右衛門宅に泊まった時のことが記されています。先ず、旅籠に付くと桶が出てきて足を洗い、奥座敷に通され、そこで、女中や亭主の女房と会話をした後に、弥次郎兵衛は夕食の時に娼妓 4 人を呼ぶよう頼みましたが、その内の 1 人は河内屋のお駒にしてもらいたいと言っています。料理は江戸の名だたる料理屋にも引けを取らないほど見事なようです。また、入浴後の喜多八は髪結を呼ぶ時は娼妓をどこかへ隠して欲しいと亭主に願いました。なぜなら、川崎宿で娼妓を呼んだ時に、髪結が不当に高い請求をしたからだと言いましたが、女中は杉戸宿にはそのような
髪結屋はいないので安心してくださいと述べています。この他にも杉戸宿に係わる内容がこの本には書かれています。
 釘屋や河内屋は実際にあった旅籠屋ですし、杉戸宿へ行かなければ書けない内容ばかりなので、作者である十返舎一九は杉戸宿の旅籠屋釘屋に泊まったと推定されます。

杉戸宿の問屋場

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杉戸宿の問屋場は下町にありました。現在の三井住友信託銀行の場所です。問屋場では 4 組(上町・河原組・内蔵組、中町・舎人組・与左衛門組、下町・雅楽組、新町・上杉戸組)から選任された 4 人の問屋(人馬を差配する監督職)と年寄(問屋の補佐役)、帳付(出納や事柄を帳面に書き付ける役職)、馬差(馬の用立てや運輸の指図する役職)などが詰めていました。
 大名や旗本、日光門主、幕府役人などが日光道中を通行する際、先触れといった書類が杉戸宿の問屋場に届けられ、大名などの宿泊や休憩、荷物の輸送状況などの情報を得ました。これ
と共に、杉戸宿に来る予定の大名の家臣は問屋場を訪れ、本陣や旅籠の手配のため、本陣役や旅籠組合総代と打ち合わせを計りました。問屋は必要な旅籠の数については本陣や旅籠組合に連絡し、輸送するために必要な人馬の数については助郷会所に連絡しました。このように問屋場は全ての情報が集まる場所であることから、本来の業務である荷物輸送のみでなく、他の役職への連絡や調整業務もあり宿場で最も重要な役割を担っていました。