野沢昌樹: 挙母下町を歩く (出逢い叢書 四) (野沢昌樹,1993)

《神明または神明町》
神明町は、挙母の脂粉・歓楽の町であった。小料理屋、小料理屋兼旅館が軒をつらね、格子づくりの置屋が何軒もあった。(古老によれば最も多い時は、二十軒以上の置屋があったそうである。)
鰻を焼く匂いに魅せられた新魚十。戦後パチンコやになった一楽。挙母ただ一軒のタクシー黒猫。横丁、袋小路に入れば数えきれないほどの芸者置屋、稽古場があった。格子戸をがらりと開け、ビン付け油のぷーんと匂う日本髪の美しい芸者衆が、三味線を抱えて今にも出てくるのではないかという風情がどことなく残っている。