朝日新聞社赤線復活のきざし 結婚や帰郷はウソ きょうで廃止して満1年朝日新聞 千葉版朝日新聞社1959.3.5
県下の赤線の灯が消えてから5日でちょうど1年になるが、法の網をたくみにくぐってまた赤線復活のきざしが強くなって来ているという。元赤線の実態と各地のの現状をさぐってみた。県警本部防犯課の調べによると、昨年3月5日、県下の赤線、準赤線が完全に転廃業してからいままでに勅令9号、売春防止法違反で検挙したものは264軒、299人に達している。このうち売春防止法違反で検挙したものは121件、148人となっている。これは関東地方では神奈川県につぐ成績だというが、その中でも船橋が107件、111人で全体の40%を占め、千葉29件、35人、木更津19件、23人となっている。 最近の傾向は、とくに赤線復活の傾向が強くなっているという。これは元業者のほとんどが旅館、下宿、飲み屋などの接客業に転業しているが、いずれも営業内容がかんばしくないため復活のきざしを見せて来ており、結局いままでうまい汁をすいすぎたということになりそうだ。また、この復活の大きな原因の一つに法を甘く見ているという面がある。これはもう1年もたったら売防法もだめになるだろうという考えで平気で違反を犯しているものが多く、この点、4月1日以降は風俗業取締法も改正され、場所を提供するなどの悪質な旅館には、今までの3倍以上の刑罰を科することになった。一方、、元従業員の帰郷、結婚はまったくウソで、県児童課が廃止直後に調べたところでは当時の従業婦529人のうち352人が帰郷し、89人は結婚、その他が就職したことになっているが、これは一時的ないいのがれで、警察側の目をくらますためであり、いまではほとんどが元の場所に戻って来ているという。 それに昨年末あたりから船橋、千葉、市川、辺りには売春婦が目立って多くなっているという。これらの売春組織は手口も巧妙になり地下にもぐって盛んに活動をつづけており、ほとんどが悪質な□□□と組んでいるという。これに対して県警本部売春特別取締本部では組織的なものなど悪質重点主義で徹底的に取り締まりを行うといっている。各地の現状は船橋は県下の40%を占めていただけあって、62軒の業者のほとんどが飲食店、バーなどに転業している。225人の元従業婦は廃止当時は結婚、帰郷などしたことになっていたがほとんどが戻って来ている。そのほかぐれん隊などと組んでいるとこさえあるという。千葉市の17軒のっ業者は下宿、旅館、料理店などに転業しているが、営業はいずれも芳しくない。従業婦のほとんども市内の飲食店へ勤めており、木更津市では17件の業者は飲食店、料理店、旅館などに転業している。68人の元従業婦の半分は帰郷し、9人が結婚したことになっているが、ほとんどが戻って飲食店の女中になっている。そのほか米軍が引き揚げたあと残された女が市内で客を引いているという。 勝浦では5軒の業者が旅館、飲食店に転業しているが、つづいた不漁のために経営は苦しいようだ。銚子では34軒の業者が廃業したものもあったが、いまではぜんぶ飲食店に転業している。約70人の従業婦はほとんどがこの飲食店につとめている。また他からも大勢流れ込んで来ており、昨年から違反を犯した3件はぜんぶほかから来たものだといいう。茂原でも当時の6軒の業者はグリーン・センターを作っており、26人の従業婦も半分が結婚し、そのほかは企業したり就職したりしている。一方、松戸の9軒の業者も旅館、喫茶店などに」転業し、戻って来た売春婦は地下にもぐって売春をつづけているという。館山、浦安町ではいまはすっかりさびれ、館山では7軒の業者は全部廃業し、手内職などをやっており、浦安でもクリーニング業、旅館などに転業しているという。