木村晩翠石見物語 : 随筆島根評論社1932
萬年が鼻と地蔵尊 リンク
P.175 添われぬ悲しみに抱合心中をした運転手と娼妓、妻の惨死を傷み発狂した老人の投死、病身な友に同情して同性心中をした漁師の娘、不治の肺患を歎(なげ)いて蕾(つぼみ)のまま散った良家の令嬢其他住人に近い娼妓の身投げ心中、之等(これら)は、皆大正昭和に置ける最近の参事である。時の恩田警察署長の発願により、娼妓共済組合が遊廓楼主等と謀って二百餘金を抛(なげう)ち、昭和4年7月萬年が鼻の巌頭(がんとう)に高さ十数尺の大地蔵尊を安置した。