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荷風の散歩道(市川市) リンク

市川
荷風が市川に越してきた昭和21年頃は、現在のJRは省線と呼ばれ、市川駅は北口のみが開設され、むろん高架にはなっていなかった。そして駅前には闇市がたった。現在のダイエーがあるあたりである。後にここは、市川駅前マーケットの愛称で人々に親しまれた露店が建ち並んだ。昭和30年代には、飲食店を中心に、衣類雑貨文具を扱う店など100余店が軒を連ねていた。
荷風はここに越して間もない昭和21年1月からしばしば食料品(わかさぎの佃煮・衣かつぎ・てんぷら・鰻蒲焼など)を買いに出掛けた。時にはここで酒やビールを飲む姿が見られた。マーケットの駅寄り中央にあった「佃幸」という店のサッチャンがお気に入りだったという。この荷風の闇市での見聞は、昭和22年11月脱稿の短編「にぎり飯」の中に織り込まれている。また、間借り生活の中で隣室のラジオの音をきらった荷風は、その音から逃れるために、しばしば市川駅の待合室で時を過ごしたが、ここで荷風が見たものは、作品「或夜」を生んだ。