共楽館史料調査会史料集共楽館地域と共に歩んだ五十年日立市郷土博物館1999.3
共楽館の建築

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共楽館の設計に影響を与えたのは明治44年秋にリフォームを終えたばかりの歌舞伎座だった。
全体に和風の大屋根をかけ、正面に千鳥破風を見せている。正面左右隅の階段室には、唐破風屋根を載せている。裏に回ると妻壁上部に「がらり」のついた丸い換気口が見える。全体に大ぶりなのと屋根裏に換気口が多い点は工場建築のようだ。設計者は建築家ではなく鉱山会社の技師だったというが、その個性が出ているのだろう。
共楽館は、現在では芝居小屋というふうに呼ばれる。芝居小屋は近年見直されつつあり、地域振興活動の一環として芝居小屋を復活させた例が全国各地に見られる。四国の金丸座(1835-琴平大芝居)は早い時期の成功例である。金丸座は日本最古の劇場で1970年国の重要文化財に指定された最初の芝居小屋である。秋田県小坂町の康楽館(こうらくかん)、愛媛県内子町の内子座は、現存する芝居小屋の中で共楽館とも年代も規模も比較的近い。

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日立(旧共楽館)日立武道館。正面に千鳥破風、唐破風屋根。