風きよし古今東西風俗散歩歩いて知る日本の大衆文化史 トランスワールドジャパン2012 リンク

著者(風きよし)が独自の目線で書いた散歩本。

目次

序章 風俗散歩とは
第一章 遊里跡を歩く
 東京の私娼街
  私娼街の本拠「浅草十二階下」 東京都(浅草)
  「にごりえ」で描かれた銘酒屋 東京都(白山)
  「遊園地」と呼ばれた私娼街 東京都(亀戸)
   幻の私娼街 東京都(三ノ輪)
 横浜の遊廓
  公園の敷地に垣間見る遊廓の名残 神奈川県(横浜)
  ペリー来航と洋娼 神奈川県(横浜)
 地方都市の遊里
  港町の遊里 石川県(宇出津)、北海道(留萌)
  鉱山町の遊里 大分県(木浦)、栃木県(足尾)
  織物の町の遊里 埼玉県(所沢、秩父)
  木材の町の遊里 和歌山県(新宮)
第二章 歓楽街を歩く
 戦後の歓楽街
  ガード下のパンパンガール
   東京都(新橋)、宮城県(仙台)、奈良県(奈良)
  戦後日本のポピュラー音楽発展史
   埼玉県(朝霞)、神奈川県(本牧)
  沖縄の特飲街 沖縄県(那覇、コザ、辺野古)
 風営法後の歓楽街
  ニュー風俗の出現
   東京都(歌舞伎町)、千葉県(西船橋)
  商店街の風俗 群馬県(太田)、埼玉県(西川口)
  観光地の風俗 香川県(琴平)、愛媛県(道後)
  遊里跡の現在 鹿児島県(奄美)、東京都(吉原)
第三章 トルコ風呂跡を歩く
 トルコ風呂の歴史
  トルコ風呂の発祥 東京都(銀座、新宿、大森)
  トルコ風呂とトルコ大使館 東京都(渋谷、新宿)
  トルコ風呂とトルコライス
  和歌山県(紀伊大島)、栃木県(宇都宮)、長崎県(長崎)
 トルコ風呂の立地と法規制
  トルコ風呂と首相官邸 東京都(赤坂)
  トルコ風呂と村おこし 富山県(利賀)、滋賀県(雄琴)
  トルコ風呂と児童公園 長野県(松本)、山形県(余目)
第四章 ラブホテル街を歩く
 ラブホテルの歴史
  芸者と待合 京都府(京都)、東京都(渋谷)
  連れ込み旅館と東京オリンピック
  東京都(千駄ヶ谷、錦糸町)
 ラブホテルの立地
  墓地に隣接するラブホテル街
   神奈川県(川崎)、東京都(大久保)
  高速道路に隣接するラブホテル街
   神奈川県(横浜)、埼玉県(岩槻)
  線路に隣接するラブホテル街
   栃木県(宇都宮)、東京都(日暮里)
 非日常空間の演出
  中世の城郭を模したラブホテル建築
  東京都(目黒)、千葉県(幕張)
  メルヘン空間の演出
  東京都(新宿)、茨城県(水戸)、大阪府(天王寺)
 ピンクビラの風俗
  ビラ剥がし跡と都市の境界 東京都(新橋、赤坂)
  ビラ剥がし跡の風俗 東京都(新橋、渋谷)
 ハッテンバの空間
  ハッテンバとは 東京都(上野)、千葉県(幕張)
  東京オリンピックとハッテンバ 東京都(信濃町、代々木)
第五章 住宅街を歩く
 白ポストと自販機
  駅前に設置された白ポスト 全国各地
  住宅街に設置された成人向け雑誌自販機
   東京都(十条、森ヶ崎、西新井)
   人口問題とコンドームの普及 東京都(西新井、神保町)
 禁止看板
  立小便禁止看板 全国各地
第六章 郊外・農山村を歩く
 物見遊山と宗教
  女人禁制が生み出した性風俗 奈良県(洞川)
  宗教と精進落とし
  三重県(古市)、長野県(戸倉上山田)
 富国強兵の時代の農漁村
 「からゆきさん」による外貨獲得政策 長崎県(島原)
終章 古今東西風俗散歩

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表紙デザイン:
・和風の装幀
・帯は「吉原つむぎ」の柄をデザイン

序章 風俗散歩とは

歴史散歩、文学散歩、グルメ散歩、路地裏散歩など、“散歩”には、いろいろな種類があります。
本書は、「風俗」をテーマにした散歩の案内書です。
「風俗」というと、最近では“フーゾク(性風俗)”を真っ先に思い浮かべるかもしれません。もちろん本書がテーマとする風俗も”性風俗”が中心になっているのですが、元来、「風俗」という言葉には、生活文化や慣習という意味で使われていました。
わたくし達の生活文化・慣習は、日々の生活空間の中に息づいています。
たとえば、
 ①毎朝、自宅(家庭)から職場へ出勤しする。
 ②仕事が終わると自宅(家庭)へ戻る。
 ③(たまには)飲み屋などに立ち寄る。
 ④休日には、郊外へ出かけるなどして余暇を楽しむ
という生活の一コマつ一コマが慣習となり、それが生活文化(=風俗)を形成していると言えます。
一言でいうと、風俗とは、身の回りの社会や文化や歴史を考えてみるときに、どのような点に着眼するか、その目線のことだと私は考えています。*1
本書では、風俗という目線で全国各地を散歩します。
第一章では、明治~戦前の遊里跡、第二章では、戦後~現在の繁華街を散歩します。ここまでが言うなれば「基本編」です。第三章のトルコ風呂跡、第四章のラブホテル街は、社会や文化や歴史を考えるうえで必要であると思い、選定した「応用編」とも言えます。そして、第五章の住宅街と第六章の郊外・農山村は、独自に選定した思い切った切り口の「特別編」です。私が考える風俗的な目線については最後(終章)にお話ししたいと思います。
散歩は、自分の足で歩き、五感を通じて町の歴史や文化に触れることができます。
ぜひ、本書を参考に自分なり“目線”を持って町並みを歩いてみてください。
【参考文献】
*1 鳥越皓之:民俗学を学ぶ人のために(世界思想社,1989)P.4-P.5