睦書房人情講談 昭和27年9月号睦書房1952
東京赤線地帯・現地ルポ 立川
P.162 羽衣町から、国電立川駅へ行く途中の錦町。羽衣町はうっかりすると住宅街と間違える。普通の住居とすこしも変わらぬ家が玄関を一歩入ると、こってりとした厚化粧した、粋な明石か何かを着た色っぽい年増が、「あら、いらっしゃいませ」と玄関に三つ指をつくといった趣向。人妻のアルバイトも居るという噂も否定できないほど、家庭的な雰囲気の漂っているのが羽衣町の特色だ。 だが、錦町はガラリと変わる。建物は洋風のカフエー式。ネオンの彩りが強烈な肉慾の匂いまで浮き上がらせるように、軒々を五彩の彩りに染めている。店から出てきた女達はいずれも洋装、ドレスを引きずっている女もいるし、股倉まで見えるような口の広いショートパンツの女の子もいる。若い16、7のあどけないのから、23、4の脂ののりきった連中が、ガムを噛みながらきゃッきゃッと男達の腕にからみついてくる。

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立川(羽衣特飲食街跡)格子状の道路の形状。