森茉莉 森茉莉全集3 筑摩書房 私の美の世界/記憶の絵 1993.9

貧乏サラヴァン

鮨屋と鮨屋の向いの焼鳥屋(この店は親友の萩原葉子がつねに「寄ろうか」、或いは「買っていこうか」と言い、「やめとこう」と呟くところの店で、六時ごろから世田谷区北沢周辺に住む父ちゃん、兄ちゃん、サラリーマンの諸兄で満員となる、冬になると薄赤い誘惑的な店である)との間に、どこへ行くのかわからない細い道があり(どこへ行くのか今もってわからないが、そこをまがると「かたばみ荘」という、枕が二つずつある寝台の部屋が幾つかあるメゾン・ドゥ・ゲテがある、ということは、この間おかしな偶然の機会から知ったのであるが)、焼鳥屋と対角の団子屋と石地蔵の祠のある角とで出来た、よじれたような四つ角が、下北沢商店街の終りであって、そこでマリアの帰り道の風景が一区切りになっているためらしい。

この文献を参照している記事

下北沢(かたばみ荘跡)文学に因縁が深い「よじれた四つ角」。