川本三郎いまむかし東京町歩き毎日新聞社2012.8
高橋

江東区を東西に流れる小名木川の西隅田川に近いところに高橋が架かる。「ばし」と濁る。この橋の周辺から猿江にかけては昭和30年代まで労働者を相手にする木賃宿、簡易旅館が多く、「高橋のドヤ街」と呼ばれていた。小名木川の水運に従事する労働者のために古くから旅館が作られていったのだろう。宮部みゆきの傑作「理由」(平成10年)はこの高橋のドヤ街から始まっている。片倉ハウスという高橋二丁目にある簡易旅館の中学生の娘が近くの交番に、「殺人事件の重要参考人がうちに泊まっている。」と言いに来る。

「片倉旅館」が「片倉ハウス」に名前が変わったところにドヤ街の近代化がある。

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両国(ビジネスホテル街)かつての簡易旅館街の名残。