臼淵天鴻市川名鑑郷土社1930
花柳界としての市川

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市川町は住宅地として有名になると共に花柳街としても著聞している。町もその割大きな町ではなく人口もわずか2万有余に過ぎないが、花柳は上下二箇所にありて三業組合も二つできている。京成電車国府台停留所下の上見番を市川三業組合といい、俗に国府台三業と称している。同じく真間停留所付近の下見番を市川真間三業組合と言っている。
国府台三業へは、国府台里見八景園その他、江戸川土手等の散策遊覧客が多く、足休めに立ち寄るので、不景気時代に市川の花柳界に憧れて帝都から自動車で乗り付ける客は余りなくても、年中不断に相当繁昌するようである。新鮮な川魚料理は此邊(このへん)の料理屋が一等よい。