今尾恵介地図マニア空想の旅集英社インターナショナル2016.6
芥川龍之介「トロッコ」の旅

P.65
芥川龍之介の「トロッコ」は、小田原~熱海間の海沿いの軽便鉄道の工事現場が舞台だ。この軽便(熱海鉄道)の前身の豆相人車鉄道は、日本初の人車鉄道だったが、人車鉄道は予想以上に人件費がかさんで収益が上がらなかったので、会社は動力化を計画し、小型の蒸気機関車の導入を決定した。同時に軌道もこれまでの610mmから762mmに広げ、軽便鉄道に変身させたのである。工事の完成は明治40(1907)年だが、「トロッコ」はこの改良工事中の話だ。