徳田秋声縮図岩波書店1971
I町(石巻町)の描写
I町では、みんながおおぜい迎えに来ていた。その後間もなく市政の布(し)かれたこの町は、太平洋に突き出た牡鹿半島の咽喉を扼し、仙台湾に注ぐ北上河の河口に臨んだ物資の集散地で、鉄道輸送の開ける前は、海と河との水運により、三十五反帆が頻繁に出入りしたものだったが、今は河口も浅くなり、回船問屋の影も薄くなったとは言え、鰹を主にした漁業は盛んで、住みよい裕かな町ではあった。

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石巻(徳田秋声「縮図」の舞台)かつての料亭街。